とても面白かったスリランカ関連の書籍を紹介します。
タイトル:パニワラル 駐日スリランカ大使が見たニッポン
著者:ダンミカ・ガンガーナート・ディサーナーヤカ
訳者:浮岳 亮仁
出版:創英社/三省堂書店
ご存知の方も多いと思いますが、この著者であるダンミカ氏は駐日スリランカ大使として2019年末まで勤められ、翌2020年8月にご病気のためスリランカで亡くなりました。この書籍は、亡くなられる約一年弱前に出版されたものです。
留学経験も含め、若い頃から日本への滞在経験が豊富で日本語も上手く、とても積極的に日本とスリランカを繋ぐ大使としての職務を行っていたそうです。
僕は面識はありませんが、とてもユーモラスでユニークな存在の素敵な方だと良く聞きました。
そして、そのダンミカ氏がスリランカの大手新聞「Lanka Deepa」紙に10年弱連載していたコラムのタイトルが「パニワラル」です。
その多数のコラムの中から、訳者である浮岳亮仁氏が、ダンミカ氏の少年時代の話、日本留学時代の話、大使就任後の話などを選んで、日本語に翻訳したものがこの書籍「パニワラル 駐日スリランカ大使が見たニッポン」です。
(ちなみにスリランカでもシリーズ書籍となっています。)
僕はこの書籍の存在を知りませんでしたが、先日、僕のシンハラ語の師である故野口忠司先生の葬儀の際に、訳者である浮岳亮仁和尚が導師をお勤めされていたことで、この書籍の存在を知りました。
浮岳亮仁和尚は日本で野口先生からシンハラ語を学び、その後、スリランカで著者のダンミカ氏の家でお世話になりながらスリランカの大学などでシンハラ語やスリランカの文化を学ばれました。
現在も、川崎市にある天台宗・泉福寺での副住職としてお仕事に加え、奥様のサウミャーさん(スリランカ人)とシンハラ語の研究や翻訳などのお仕事も行っておられます。
親愛なる野口先生を介して、素敵なスリランカの繋がりで知ることができた書籍です。
そして、
その内容がとても面白いので、皆様に紹介したいと思い、感想を少し記します。
まず、タイトルの「パニワラル」ですが、これはスリランカのお菓子の一種でシンハラ語では「පැණි වළලු」と表記します。
ウラド豆を主とした生地を油の中で渦巻状に揚げて、それを甘い蜜に浸した後に乾燥させたものです。僕達もスリランカ滞在中に何度も食べたことがあるとても美味しいお菓子です。
この本を読んで、どうしても食べたくなったので作ってみました。
いい感じ!!
写真のものは出来立てのもの。日が経過すると、見た目も風味も変化します。
この「パニワラル」がタイトルになったのは、ダンミカ氏の大好物であったからいう理由だそうです。
しかしながら、本の内容とはそれほど関係は無かったりします。
ただ、少しだけパニワラルについて触れられているダンミカ氏の少年時代の思い出話は、とても心に響くものがあります。
そして、既述の通りスリランカの新聞に連載していたコラムなので、スリランカの人々が読者であることが前提とされています。
天皇陛下に接見するなどの大使ならではのエピソードから、日本の日常的な風景や伝統文化なども、ユーモアも交えながらとても丁寧に描写されています。
そこには、日本に対する深い理解と愛を感じずにはいれません。
日本のバスについて、乗って降りるまでをただただ事細かく記しただけのコラムは、それを読んだスリランカの人々がどう感じたかまで興味が湧きます。
また、多くのコラムのはじめに記されるその時の光の描写は、よりそのシーンを想起させます。僕(日本人)がスリランカに行った時に感じる光が印象的であるように、スリランカ人が日本で感じる光も独特なんだと分かりました。
こんな素晴らしいコラムが、スリランカの新聞で毎週連載されていたことに深く感動しました。
とても面白い本なので、興味を持ったかたは是非読んで欲しいです!
また、ダンミカ氏が築いたスリランカと日本との素晴らしい関係を、僕達も大切にしていきたいと思います。
<参考>
ダンミカ氏について読売新聞で紹介された記事は以下リンクで閲覧できます。
◎「フーテンの寅さん」に魅せられた元駐日スリランカ大使(読売新聞オンライン 2020/11/09)